整える
天気の良い日は、日帰りで玉造温泉に行く。(週二回のペース)
美肌効果日本一の無色透明のお湯に入ると、風呂上りはツルツルスベスベだ。
玉造温泉の中で最もお気に入りなのは、「ゆーゆ」と言う温泉施設。
大露天風呂に、打たせ湯、ドライとミストのサウナが有る。
至福の時間を与えてくれる、最高の温泉なのだ。
今日も真っ赤なフランス製のジャケットと、真っ赤なブリーフでお出かけした。
玉造温泉は、綺麗なバックパッカー女子が多く、ナンパの巣窟かも(年甲斐も無く)
何時もジェットバスが有る地点で、睾丸のマッサージをする。
(此れが溜まらなく快感で、思わず勃起する事も屡々)
打たせ湯では、頭のてっぺんから脳みそ直撃で、精神病退散ピンポイント攻撃。
適度にノボセ上がった処で、95度のドライサウナに移行。
ちょっと無理して、砂時計を見つめる事、5分。
もう、心臓ドキドキの限界点。
此れで流行りの「整う」をしなきゃと思って、頭から冷水を被った。
「あれ、胸が苦しい。気分が悪い。立ってらんない。」
腰を下ろし、仰向けになって倒れ込んでしまった。
「大丈夫ですか?」「誰か救急車を呼べ!」
え~、私の事、心配してくれんの?
手を差し伸べられ、漸く介護用の椅子に座る。
施設の職員も駆けつけて来た。
「温泉施設では、長湯で亡くなられる方が多いんです」
「顔色が真っ白ですから、救急車を呼びましょう」
「いえ、心臓弁膜症ですから、血栓が飛んでティアを起こしたのでしょう」
「心配は要りません。少し此の儘休ませて下さい」
「でも、足の爪が変色していますよ」
「いえ、此れはペニキュアです!」
人間ウオッチは何時でも楽しい。特に温泉。
幼い女の子連れの父親が二組。
一人は、背中に見事な般若の刺青が彫ってある。
高齢の常連客が、長生きの果ての話を、面白可笑しく話している。
そして、若者のお尻はキュンと締まっていて、カッコ良いなと思った。
私は、身近な人間から事如く裏切られ、虐げられて来た過去を持つ。
地位と名誉と金、私利私欲の塊で、人間は醜いと思っている。
憎み、忌み嫌っているので、成るべく関わらない。
しかし、全ての人間がそうでない事は、実感する事もある。
素っ裸の人間だけが持つ、無垢な心に触れた瞬間
私は何時も、仏の心になれるんだ。
気が付くと、16時45分発、松江駅行きのバスの中。
八百の神々が舞い躍る宍道湖の夕焼、整って行く私の心。