今日も泣く

三日前に、ウーパールーパーの水替えの最中に、セキセイインコのサクラが当然頭の上に乗っかって来た。

ベランダの外だったので驚いて、思わず「わっ！」と声を出してしまい、サクラは飛び出してしまった。

北側の玄関から後を追って飛び出すと、遠くのマンションと住宅街の間で、飛び回る姿が見えた。

インコは外屋外に出ると、自分が何処に居たのか解らなくなって、迷子になてしまうと、ネットに書いて有ったのを思い出した。

此れは、とんでも無い事に成ったと思って焦り、直ぐさまタモをもって駆け出した。

黄色いサクラは良く目立つので、暫く追い掛けて居られたが、終に見失ってしまった。

住宅の庭も屋根も、高いマンションのベランダにも目を凝らし、不審者の様に彼方此方探し回ったけど、何処にもいない。

一旦自宅に戻って窓から探していると、残された彼氏のピーチの心配そうな様子を見て、再び奮い立つ。

暫く探して諦めかけていた時、春霞の空に不自然な飛び方をする、二羽の烏が見えた。

その先には、逃げ惑うサクラの黄色い姿が確認できた。高度も高く、飛んでいるスピードも速い。

私は、見失わ無い様に全力で走ったけど、住宅街は無情にも行き止まりになった。

セキセイインコの寿命から言って、一日１０日の幸せを一緒に過ごす約束をしていたのに、此れがサクラとの永遠の別れなのだろうか。

私の不注意なのだから、悔やんでも悔やみきれない。失意のどん底。

其れ以来、毎日空に目を凝らし、黄色い飛体を探している。１パーセントの奇跡に縋る。

松江城公園の木々の上も、電線の上も、見渡す限り探してから、出雲八百神々が舞い踊る夕暮れ時に帰っている。

他の世界なんてどうでも良い。世界が滅んでも良い。私の命と引き換えに、サクラの命を救って欲しいと神に願う。

今日も洗濯をしていても、アイドルの野外コンサートの間にも、空に目を凝らして探している。

堀川遊覧船を眺めながら煙草を吸っていると、ふとサングラスの下から涙が流れてしまった。

一人で蕨狩りをして、大量に採れたのに、今日も泣いている。